仙台空港は旅客410万人が射程圏、北海道7空港フォーラム(4)

仙台国際空港の岩井卓也社長

「HOKKAIDO空港運営戦略フォーラム」(9月9日)では、もう一つの先行事例として、コンセッション(運営権売却)方式で2016年7月1日から仙台空港を運営している仙台国際空港株式会社(宮城県名取市)の岩井卓也社長が登壇。航空路線の誘致や空港アクセスの改善などにより、「20年度に旅客数410万人」の目標が射程圏に入ったことを明らかにした。

 仙台国際空港株式会社は、東京急行電鉄や前田建設工業、豊田通商などが出資して15年11月に設立。仙台空港の30年間(延長で最長65年間)の運営権を取得している。岩井社長の主な発言は以下の通り。

▼コンペで示した目標値の進捗

・「路線を増やし、航空需要を増やす」などの3点が主な施策。これに絞り込むまでが大変だった。提案コンペは甘くない。網羅的な募集要項と採点表があり、どこにポイントを合わせるかで大議論した。国管理空港の1号案件だったので、悩んだ末、「路線を増やして、航空需要を増やすことだ」と思い定めて提案した。これは今や常識のようになっているが、常識でなかった時代をまざまざと知る私としては、非常に不思議な気持ち。7空港いっぺんにやる北海道では、これを超える大提案が出るかもしれない。

・旅客数と貨物量は「5年後(20年度)に410万人と1万t、30年後(44年度)に550万人と2万5000t」の目標を掲げて、運営権者に選んでもらった。16年度の旅客数は316万人で、17年度は前年度比8%増の341万人が目標。ほぼ予定通りに推移している。341万人を達成できれば、「410万人」が現実味を帯びてくる。

・サラリーマン人生を賭けて提案した身の上としては、こういう軽い言い方はいけないのかもしれないが、提案書を出した段階では、「410万人」をどう解決するのか非常に不安だった。でも今は「やれそう」という予感がしている。会社はまだ赤字なので、偉そうなことは言えないが。

・半面、貨物はなかなか厳しい状況だ。ナローボディ(通路が一つしかない旅客機)が主流の空港なので、なかなか大きく増えない。これは、もっと考えないといけない。

・「エアライン負担の軽減と顧客満足度の向上→旅客増加→店舗・駐車場などからの付帯収入の増加→エアライン負担の軽減と顧客満足度の向上」と、そこから波及する「地域への外部経済効果」というサイクルを信じて、利益が出る前から、先行して設備投資をしている。

▼仙台空港の特徴

・仙台空港の年間旅客数は、新千歳空港の約2000万人と比べて非常に少ない。国際線を中心とした、東日本大震災後の風評被害の影響もあるが、さらに大きな要因は東北新幹線だ。

・もっとショッキングなのは、東北6県居住者の出国空港の比率が、成田56%、羽田25%、仙台12%であること。仙台空港の利用者は12%に過ぎず、大半の人が成田・羽田空港で乗り継いで出国しているのが現実だ。成田空港は、滑走路をもう1本造る計画を発表している。そうしたところに東北の需要も背負わせているので、当社がもう少しできることがあると思う。

▼民営化後の取り組み①空港の営業

・世界の航空商談会に参加した。これは、エアライン(航空会社)と空港会社の「お見合い」。面談したいエアラインにウェブで申し込み、了解を得たら成立する。結構高い費用を支払い、規定の15分間で、英語でプレゼンして、質問に答え、それで興味を持ってもらえなければ終了という厳しい会議だ。当社はこの場で、(シンガポール航空傘下の)LCC(格安航空会社)の「スクート」就航を狙ったが、外した。リベンジしたい。

・エアラインや観光プロモーションの経験者、多言語の人材を積極的に採用している。

・就航してほしいエアラインにプレゼンする際は「つかみ」が大事。かまくらの写真など、厳選した東北の風景4枚の写真を見せている。料金などをどうするかは、話が進んでからでいい。

・東北経済連合会、東北六県商工会議所連合会、東北観光推進機構などの人たちと一緒に台湾を訪れ、LCCの「タイガーエア台湾」の人たちと商談したこともある。

・観光振興は、プレーヤーが非常に多く、裾野が広い。創意工夫がSNSであっという間に広がるという特徴もある。空港会社だけでできるとは思わないので、地域の皆さんと一緒にやるのが当社のスタイルだ。具体例として、17年1月12~15日、タイの首都バンコク郊外のショッピングセンターで「Beauty Tohoku」と題したイベントを宮城県や仙台市と一緒に手がけた。旅行商品と食品輸出を組み合わせてアピールする試みで、試食や観光パンフレット配布を実施。試食は大変な「人寄せ」効果があり、4日間で400万円ほどの東北旅行を売り上げた。現地の物価水準からすれば、まあまあの出来だ。

・着陸料と空港使用料を変えた。民営化前は、空港使用料に占める「固定料金」と「旅客数連動料金」の比率はおよそ7対3だった。だがエアラインには、良い時も悪い時もある。そのリスクを空港がシェアできるように、民営化後は、旅客数連動料金の比率を約6割に高めた。就航している十数社のエアラインからは基本的に大変歓迎され、スムーズに料金変更が進んだ。

・就航路線は、韓国のアシアナ航空が震災後、週4便に減らしていたのを、デイリー(毎日)に戻してくれた。スカイマークは、いったん撤退したが、1年半かけて戻ってくれた。順調に推移している。9月末には、ついにピーチ・アビエーションが拠点化してくれる。

<民営化後に実現した新規就航・増便路線>
・16年6月29日:タイガーエア台湾が台北線を週4便/増加旅客数は年5万人
・16年6月28日:アシアナ航空がソウル線を毎日/増加旅客数は年4万人
・17年7月1日:スカイマークが神戸線を週14便/増加旅客数は年20万人(予想)
・17年9月24日:ピーチが札幌線を週14便
  17年9月25日:ピーチが台北線を週4便/増加旅客数は札幌線との合計で年25万人(予想)

▼民営化後の取り組み②空港アクセスの改善

・宮城県の第三セクター鉄道「仙台空港アクセス線」は、仙台空港とJR仙台駅を最速17分で結ぶので、実は福岡空港(福岡空港と博多駅を約5分で結ぶ鉄道)の次に便利なのだが、30分に1本の運行のため、全く評価されていなかった。第三セクターは膨大な建設資金にあえいでいるが、無理を言って今春、1日40往復(80本)を43往復(86本)に増発してもらった。おかげで、特に早朝便の利用者から大変好評だ。今後15分に1本の運行にできれば、さらに便利になる。

・驚くことに、民営化前は空港直行バスが1台も通っていなかった。10年前に「仙台空港アクセス線」ができたので、宮城県がバスに対する補助金を打ち切ったら、全部なくなった。そのため、当社は地域のバス会社を懸命に回り、(酒田、山形、平泉、東山温泉などを発着する)空港直行バスを新設してもらった。1番長い路線は4時間ほど走る。思ったよりも早くネットワークができて喜んでいるが、乗車率はまだまだ低いので、バス会社各社は採算ベースに乗っていない。粘り強くお手伝いして、1日も早く採算ベースに乗るようにしたい。

・駐車場を拡張して、駐車可能台数を1367台から1594台に増やした。ウェブ予約もできるようにして、「今は第1駐車場が混んでいる」などと分かるようになった。

▼民営化後の取り組み③空港施設の改良

・ターミナルビルの1階(到着階)を改装して、観光案内所を新設した。JTBの協力も得て、ここで「JR EAST PASS」(訪日旅客向けフリー切符)などを販売・引き換えできるようにした。

・屋上の展望デッキを無料にした。代わりにビアガーデンでお金をいただいており、人気がある。「コンセントがない」というクレームは一番多いので、充電コーナーのコンセント数も70近く増やした。空港の周りをジョギングする人のために、シャワールームとロッカールームがある「ランナーズポート」も設置した。利用はまだこれからだ。

・既存のターミナルビルを増築して、LCC専用の旅客搭乗棟(ピア棟)を造る工事を今夏、開始した。エスカレーターを設けないなど、質素な造りだ。搭乗ゲートは三つほど増やす予定。完成すれば、早朝や夜間の便を増やしても、スムーズに乗り降りできるようになる。
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