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インフラ投資の未来、「東京サミット2018」報告

英国のインフラ投資専門メディア Infrastructure Investorが4月に開催したインフラ投資カンファレンス「東京サミット2018」から、「日本のインフラ投資」をテーマにしたトークセッションの概要を伝える。ファンド組成、投資アレンジ、コンセッション事業運営などに携わる3人のキーパーソンが、インフラ投資の未来を語る。

<スピーカー>
奈尾 真一
丸の内インフラストラクチャー 社長

大橋 純
マッコーリーキャピタル証券 東京支店支店長
マネージングディレクター、投資銀行本部長

岐部 一誠
前田建設工業取締役常務執行役員 経営企画担当兼事業戦略本部長

<モデレーター>
菅 健彦 インフラビジネスJAPAN 編集長

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写真右から、前田建設工業の岐部一誠取締役、マッコーリーキャピタル証券の大橋純投資銀行本部長、丸の内インフラストラクチャーの奈尾真一社長、インフラビジネスJAPAN編集長の菅健彦 (出所)インフラビジネスJAPAN

 3人のスピーカーはいずれも、最前線でインフラ市場を創出する立場にある。丸の内インフラストラクチャーの奈尾氏は三菱商事出身で、昨年、日本国内のアセットを投資対象とする総合型インフラファンドの立ち上げを発表した。マッコーリーキャピタル証券の大橋氏は、アドバイザー、アレンジャー、オペレーター、投資家など、さまざまな立ち位置でインフラビジネスに関与している。前田建設工業の岐部氏は三つのコンセッション事業の運営権者として選ばれ、事業に参画している。

日本ではこの3月に、コンセッション事業のルールブックともいえる運営権ガイドラインが改正され、民間事業者が市場に参入しやすい環境が整いつつある。PFI法と水道法の改正案も、国会で審議される予定だ。国は、再生可能エネルギーを主力電源に位置づける方針を示す一方で、再エネの普及を促してきた固定価格買取制度(FIT)の価格を引き下げる動きもある。まず、インフラ投資の現状について聞きたい。

奈尾 日本のインフラがなぜ金融のお金を必要としているのかを、原点に立ち返って考えてみたい。今後、人口が減少し、経済規模が縮小していくなかで誰がインフラの更新を担うのか。これまでは公的セクターだったが、社会保障費が増えるなかで公共投資を削ることが求められている。豊富にある投資家の資金をインフラに投じるファンドの機能ができれば、日本の問題解決につながる。そういう意味で、2018年は“インフラ投資元年”になると思う。

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奈尾真一氏(出所)インフラビジネスJAPAN

大橋 政府や関係省庁のリーダーシップもあって、ここ数年で数多くのコンセッション案件が生まれている。これから日本のインフラ投資の動きは、さらに活発になると予想している。これまでファンドはコンセッション事業を投資対象にしにくかったが、今回の運営権ガイドラインの改正でクリアになった。金融の投資家にとっては大きな出来事だ。

岐部 コンセッションを実際にやってみて、いくつかわかったことがある。行政を効率化していくことが社会課題の重要なポイントであるが、民間事業者に運営業務を委託するコンセッション方式は、課題を解決する有効な手段になる。新しい取り組みに対する行政の理解は道半ばであるが、成果を出せば見方も変わってくる。

注目セクター

 どのようなセクターに注目しているか。

奈尾 今後、日本で伸びるセクターの一つは再生可能エネルギーを含むエネルギー全般であり、電力自由化や規制緩和がこの動きを後押しする。もう一つは上下水道だ。これはボリュームが大きく老朽化も進んでおり、民間資金を必要としている。ただ、国ではなく自治体が所有者なので難しさもある。制度設計上、自治体と民間の双方にインセンティブを与える仕組みが求められる。

大橋 再生可能エネルギーを含めたエネルギー全般に注目している。脱炭素化や電力・ガスマーケットの規制緩和を起点に、より大きな動きが5年~10年以内に起きるだろう。先ほどの話にもあったとおり、人口減やインフラ老朽化の問題のソリューションを提供するセクターが伸びる。例えば、上下水道事業の広域化・包括化が一つの手段になる。インバウンド対応では空港、港湾も有望だ。廃棄物処理施設の包括的民間委託や、廃棄物発電にも注目している。

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大橋純氏(出所)インフラビジネスJAPAN

 前田建設には、再生可能エネルギー分野で開発中のものも含めると300MW、総事業費約1400億円規模の案件がある。コンセッションでは空港、道路、国際展示場の運営権を獲得してきたが、今後は何を狙っていくのか。

岐部 投資家としての視点が大事だ。となると、収益の安定や経営のリスクで案件を選別していくことになる。例えば、再生可能エネルギーの設備利用率(稼働率)を低い方から並べると、太陽光、風力、バイオマス、地熱の順になる。これまでは太陽光が投資の中心だったが、今後は地熱にシフトしていくだろう。

コンセッション事業に比べれば、再生可能エネルギー施設は時間とともに価値が下がるので、早めにエグジットすることが前提となる。同じようにコンセッション案件では、人口減少や為替などの影響を考えると、空港よりも道路、道路よりも水道のリスクが小さいので、その方向で投資できたらよいと考えている。

 今後、日本でのインフラ投資ビジネスを深化させていくうえで、どんなパートナーと仕事をしていきたいか。

奈尾 丸の内インフラストラクチャーにはインフラ投資やオペレーションの知見があるが、必ずしも十分ではない。私たちにないインフラの知見を補完できる事業者なら、日本人であろうと外国人であろうと、金融投資家であろうとオペレーターであろうと、一緒に仕事をしていきたい。

大橋 アドバイザーやコーディネーターの立場でお話しすると、やはりお金だけではなく、ノウハウや専門性を組み合わせて強いコンソーシアムを組成していくことが重要だ。私は、皆さんの特長を生かしながらコンソーシアム組成をサポートすることを常に考えている。デベロッパーや投資家の立場では、それぞれの分野のエキスパートを集めて最高の事業を実現したい。

岐部 日本にPFIや再生可能エネルギーのマーケットができる前から、海外の競争力を有する人たちとチームをつくるしか、勝ち目はないと思っていた。これまで空港や道路ではマッコーリーの力を借り、国際展示場ではフランスの会社と組んでここまできた。これから始まる水道でも、海外の競争力ある人たちとチームをつくることを考えている。そういう意味では、海外の企業や人たちが、日本で活躍できるチャンスが訪れている。

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岐部一誠氏(出所)インフラビジネスJAPAN

5年後のインフラ投資ビジネス

 ずばり、5年後に皆さんの会社のビジネス、あるいは日本のインフラ投資市場はどうなっていると思うか。

奈尾 日本のインフラは資金を必要としているが、受け皿となるファンドがないし、オペレーションの蓄積もない。これから5年以内、ひょっとしたら3年以内かもしれないが、我々のようなインフラファンドがどんどん立ち上がり、ガバナンスの効いたインフラ投資をしていくことが日本の社会や経済にとって必要だ。

私たちのファンドは、5年かけてゆっくり投資するつもりはない。今、頂戴しているコミットメントは、できるだけ速やかに投資し、2号、3号ファンドを立ち上げていきたい。日本の金融投資マーケットを変えるつもりで取り組み、私たちも成長したい。

大橋 私がヘッドを務める投資銀行部門には約40人のスタッフがいる。20数人がノンバンカーで、プロジェクト開発やエンジニアリングなどに従事している。日本の潜在的なインフラ投資のポテンシャルは大きい。今後5年間でより多くのビジネスを手がけて、大きなプラットフォームにしたい。日本に根ざしたインフラ・エネルギー・ハウスとして、革新的なサービスやソリューションを提供していきたい。

岐部 期待を込めて言うと、5年後に前田建設は営業利益の半分を再生可能エネルギーやコンセッションで稼げる会社になっていたい。現在約50人強で二つの事業をやっているが、今年度末には70人強、さらに1年後には100人体制にすることが決まっている。順調にいけば5年後には200人から300人がインフラの投資・エグジットに携わる。そのときは、それなりの営業利益やキャッシュフローが生まれているだろう。

 日本のインフラ投資マーケットの発展にかける、皆さんの強い意気込みを感じることができた。本日はありがとうございました。

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