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今月のワード:ESG投資
ESG投資とは、「Environment(環境)」、「Social(社会)」、「Governance(企業統治)」という非財務情報を判断基準に加えた投資のことである。企業活動の結果である財務情報のみではなく、企業活動のベースとなるESGへの配慮が中長期的には企業の成長および企業価値の向上につながるという、投資の目線(投資家を意識した目線)に重点を置いた考え方だ。

ESG投資にあたり、一般的に考慮されている主な事項は、次のとおりである。

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ESGへの配慮は持続可能な社会を実現するために不可欠
ESGが注目された背景には、2006年に国連が提唱したPRI(Principles for Responsible Investment:責任投資原則)がある。PRIの「持続可能な社会の形成には、投資をする際にESGを考慮して社会的責任を果たす必要がある」という考え方に賛同し署名をした機関は、現在世界で2,000社を超える。その一方で、署名機関は運用資産の50%以上にESG投資をすることが求められるようになるなど、形式だけではなく実態も求められるようになってきている。

世界のESG投資の市場規模は2014年から2016年の2年間だけでも18.3兆ドルから22.9兆ドルへ拡大したが、日本は5,000億ドル未満にとどまり、日本の署名機関は69社と世界のわずか3%に過ぎない。しかし、2015年には世界最大の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が署名するなど、ESGの重要性が認識されるにつれ、少しずつ広がりを見せている。

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(出所)署名機関数はPRI Association、市場規模はGlobal Sustainable Investment Alliance

世界的なESG投資の拡大に日本が取り残されないために必要なことは、次の三点である。

一点目は、ESGの枠組みや考え方について、統一的に整備することである。財務情報と非財務情報から企業の価値創造戦略を示す「統合報告書」を発行している企業は、増加してきたとはいえ東証一部上場企業の約15%に過ぎず(「日本企業の統合報告書に関する調査2017」KPMGジャパン調べ)、開示される情報は企業により異なる。また、企業のESGへの取組状況が格付け機関により一部評価されているが、評価機関により評価項目や評価方法が異なっている。客観的かつ統一的な開示や格付の基準ができれば、企業側のESGへの配慮も、投資家によるESG投資も一層進むだろう。

二点目は、企業の長期的な価値創造に大きな役割を果たす金融機関においても、これまで以上に持続可能性(ESGへの対応)を考慮することである。2011年に金融機関の行動指針として「持続可能な社会の形成に向けた金融行動原則(21世紀金融行動原則)」が策定されるなど、金融機関の取組みは本格化しつつある。

三点目は、公共も企業のESGへの対応を促すことである。例えば大規模なインフラ整備などの公共事業を発注する際に、ESGへの取組みを評価したり条件としたりすることが考えられる。発注内容に応じたESG項目を採用すれば、発注者が求める施策の達成にもつながるだろう。

ESGを考慮することの重要性は増している。日本においても関係者がそれぞれの立場でESGへの理解を深めていくことで、より企業のESGへの配慮は進み、企業価値も向上し、日本市場への世界からの投資は増えるだろう。また、そのことは持続可能でより良い環境・社会の形成にもつながると期待できる。

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川嶋 まさみ(かわしま・まさみ)
みずほ総合研究所 社会・公共アドバイザリー部 主任研究員
内閣府や国土交通省をはじめとする中央省庁および地方公共団体の政策調査、PPP/PFI事業化アドバイザリー業務などに従事。スポーツや観光の分野から、空港や上下水道のインフラ分野まで、多岐にわたる調査実績がある。ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)など、新しい社会的投資モデルに関する調査研究も担当。主な論文に「PDCAサイクルの導入による事業の効果測定が不可欠」(金融財政事情)、主な講師実績に「官民連携事業の推進のための地方ブロックプラットフォーム研修」(国土交通省)、「PPP/PFI研修」(国土交通大学校)。早稲田大学卒業。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。みずほ銀行にて産業調査などの経験を経て、みずほ総合研究所出向(現職)
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